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「農業のマーケティング教科書/岩崎邦彦」も事例2に役立ちそう

 

 

岩崎邦彦氏の著書は、事例2のバイブルである。もっとも著名なのはスモールビジネス・マーケティングであろうか。

 

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さて、そんな岩崎氏の著書の中で最も新しい(2017年11月刊行)「農業のマーケティング教科書 食と農のおいしいつなぎかた」を読んだ。結論から言うと、とても良い本であった。農業を主軸においているので、事例2への応用性は低いか?とも思ったのだが、そんなことはない。事例2で農業以外の分野の問題が出ても、大いに活用できる。そんな内容であった。以下、勉強になったところをまとめたい。

 

 

現代のマーケティング

他の著書でも主張しているが、現代のマーケティングは、「モノ」よりも「コト」を売るのだと言う。転じて、「何を売るか」よりも、「なぜ買うのか」を考えなければならない。売り込みという「押す力」でなく、買いたくなる「引く力」が重要だ。

 

例えば、音楽業界である。過去にはCDが大量に売れていたが、現代は売れていない。では音楽産業全体が衰退しているかというと、そうではない。フェスといったライブ市場の規模は拡大している。その内容も一方的な鑑賞だけでなく、体験型・参加型のものも増えているそうだ。

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母の日にはカーネーションが売れる。これは「カーネーションという花を買いたい」と思って消費者はカーネーションを買うのではなく、「母への感謝の気持ちを贈りたいから」カーネーションを買うのである。

 

このように「モノ」だけで売れる時代ではなくなった。現代では、生産者は消費者と同じ方向を見るマーケティング志向が重要である。マーケティング志向は、「想像力(客の心や生活を想像する)」、「共感力」、提案力(顧客の一歩を先に行き提案する)」が肝だそうだ。

 

知覚品質の向上

「なぜ買うか」へ繋げるため、農作物は「食べたいという気持ちの喚起」、つまり知覚品質を向上させることが効果的である。では、知覚品質を高めるにはどうすれば良いのだろうか。それは、ブランド力の向上、見える化(フォントやパッケージの工夫)、言える化(プリプリの牡蠣といった表現)、ストーリー、掛け算(何と一緒に売るか)、陳列、価格(高い方が価値を感じる)、を考える必要がある。

 

(余談だが、「言える化」とは美味しさを示す表現を使うという事である。コクがあるとか、後味をひく、五臓六腑に染み渡るとか。こういう「美味しさを示す表現」を意味する日本語はあるのだろうか。英語ではSizlling Wordとかになりそうだが、適切な和訳は見たことがない)

 

ここの手法については、ブランド力の向上に関する諸活動とシナジーをもった形で進めるのが良いであろう。

 

好業績の農業者の特徴

では、実際に高い業績をあげている農業者にはどのような特徴があるのだろうか。岩崎氏は、以下の点を述べている。

  1. 消費者と交流している、消費者の声を聴いている。
  2. 価格競争に巻き込まれにくい(競合が少ない、ブランド化、独自性)
  3. 安定的な販売策を確保している、流通業者と連携
  4. 核(シンボル)となる商品がある
  5. 女性の力を積極的に活用している

最後の「女性の力を活用している」というのは、分からないでもないが、少し意外であった。女性の消費者の立場になって、マーケティングを進められるのが良いのだろうか。

 

いかに個性を出すか

「価格競争に巻き込まれにくい」ためには、個性が確立されていなければならない。個性はブランド化にもつながるものであり、中小企業にとって重要な事項である。個性を出すための方法には、味覚・香り・食感、形状、サイズ、色、パッケージ、生産方法・栽培方法、肥料・エサ(例:イベリコ豚)、品質基準、生産場所、ずらし(例:夏場のイチゴ)、ストーリー、利用シーン、用途の限定(お好み焼き用ソース)、売る場所(鯖缶をインテリアショップ)、逆張り(辛くないラー油)、があるという。

 

ここのあたりの記述は、農業以外の分野でも非常に示唆に富むものとなっている。中小企業が個性を出して、差別化するためのアイデアを発想する上で、今後も読み返したいところだ。

 

所感

冒頭で述べたが、本書は農業以外にも活用できるものだ。個人的に気になったのが、「女性を活用している農業者」の業績が良いということである。女性の視点を入れることで、女性の消費者からの支持を得られているのかもしれない。これからは女性のみならず、女性の中でもママ、パパ、外国の人、他宗教の人(特にハラルの関係からイスラム教徒)、等も活用することが重要となるであろう。

 

昨年の受験の時は、なぜこの本を読まなかったのだろう?と思ったのだが、よく考えたら2017年度の試験の後に発売されたものだった。2018年度の事例2は、農業関係の問題が出るかもしれない。というか、出て欲しい。そう思える本書であった。 

農業のマーケティング教科書 食と農のおいしいつなぎかた

農業のマーケティング教科書 食と農のおいしいつなぎかた