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(書評)知的トレーニングの技術/花村太郎

 

 

 

知的創造のための技術を述べる本である。

 

計画の立て方、発想法、モチベーション管理といった知的生産に欠かせない土壌づくりを説明し、実際的な文章の書き方、読み方から批判的思考の否決にまで踏み込んでいる。 

 

 

知的創造に関する書物は多い。ずっと前には外山滋比古さんの本も話題になっていた。そういう本は好きなので本屋でよくパラパラと見るのだが、同じような内容のものが多く、実際に買うことは少ない。

 

だが、この本は違った。

 

特に興味深かったのが、知的生産工程をモデル化したもの(P111)や、マトリックスづくりの方法(P150)である。複雑な対象を分析する上で使用される単純化された論理装置である。二次試験でも、与件文を読み、マトリックスにあてはめ、解答を導くということができるのではないかと考えているので、製作してみたい(ちなみにMMCのものとは異なる)。

 

またインプットのみならず、思索者になることの重要性を説いている。少なくとも3分の1は、情熱ももたず交遊も避けて書物も読まずに過ごさないならば、どうして思索者になることができようか。ノートを前に、自らの言葉を打ち付け、物質化することが、思索を深める上で重要という。

 

なお、本著で紹介されている知的生産として、12の工程が紹介されている。①問題意識発生・テーマ設定、②テーマ分析、③第一次情報収取、④資料の分類・分析、⑤エントロピー廃棄、⑥構想、⑦構成、⑧草稿執筆、⑨草稿検討、⑩第二次情報収集、⑪草稿修正、⑫清書。問題は、自分がどの工程にいるかを常に確認し、何を行うかを自覚しておくことだ。診断士として企業診断する際もこのような工程を明確にし、右往左往しないようにしたい。

 

本著が扱うのは知的創造である。中小企業診断士が分析を行うのとは状況が異なる。だが、理想は、企業に関係する情報の「すべて」を集め、分析し、問い、結論として助言を導くこと。その理想に向かい、現実の制約と調和しながら、現実的な解を目指していくという点では似通ったところも多かろう。

 

 

その他ひっかかった文章は以下のとおり。

現代の個人は…、何にでもなることができるけれども、何になるべきかを決定する根拠は何もない。(P29)

診断士としてどうあるべきかという問いに、解答はないと知るべし。自分で答えを考えなければならない。

 

人生と運命にたいしてつねに賢くあろうとする意志が必要だ(P43)

診断士になった後も、生涯にわたり、自己研鑽していく姿勢を維持する。診断士は長距離走なのだろう。

 

森鴎外も以下のように言ったそうだ。皆は馬になりたがるが、牛もいいと。

牛になる事はどうしても必要です。我々はとかく馬になりたがるが、牛には中々なり切れないです…あせってはいけません。頭を悪くしてはいけません。根気づくでお出でなさい。世の中は根気の前に頭を下げることを知っていますが、火花の前には一瞬の記憶しか与えてくれません。うんうん死ぬまで押すのです。(p50)

 

毎日の習慣をつくるいちばんの秘訣は、「すぐにとりかかること」の習慣化だろう。もちろんそのためには、机の上に不必要なものを置かないこと、片付けから始めないこと、乱雑なものは押しのけて、単刀直入に仕事にむかうことだ…知的ウォーミング・アップとして、語学のような手作業を短時間やるように決めておくと良い。(P50)

全くその通りである。現在、勉強の習慣化が固まっていないので、ちょっと悔い改めたい。なお、気力を養う方法としては、時々自然とふれる方法を紹介していた。

 

自ら問いを発することができるようになること…問いは知的好奇心からうまれる。知的好奇心は自分のなかの知的空白部、つまり欠如の感覚からでてくる。ぼくらは自分のなかに、世界大の知的マップをつくろう。自分の今もっているありとあらゆる知識を、自分なりのしかたでこのマップに配置するのだ…そうして、このマップをもとに、世界や自分の生活のありとあらゆる問題を説明するクセをつける。(P62)

自分の中に診断士としての世界像を作り、その上で「欠如の感覚」を持ち、「問う」という姿勢を持ち続ける。そこから問題の原因や解決策、助言は生まれてくるのだと心得る。

 

相手が専門を深めていればいるほど、書物や論文で発表されていない流動状態にある見解を聞くことができる(P86)

書物や論文で得られる情報は、あくまで土台であり、得るべき知識はまだ文字や書物となっていない状態にあると認識する。その生の状態の情報を捉えることが、報告書や論文等を作成する上で有益となる。

 

分析とは見えない関係を見つけることだ…分けられた諸要素間の関係や規則性を見つけるところに主眼を置く。(P140)統計表の読み取りでもうひとつのポイントは、視覚化せよということだ(P144)

このあたりは、QC7つ道具や新QC7つ道具を使用する際に、意識していたい。 

 

なお、この筆者は続演として「思考のための文章読本」も出版している。こちらも余裕があったら、読んでみたい。だがそれよりも、知的トレーニングの技術を何度も読み返すことが、自分にとって重要だと思った。