社会人が受ける研修に価値はあるのだろうか
社会人が受ける研修に価値はあるのだろうか。
挑発的なタイトルにしてしまったが、自分が時々感じることは間違いない。もちろん、すべての研修が無駄とは言わない。出席して良かった、と思う研修も少なからずある。パワポの使用法だとか、エクセルの使い方だとか。だが、やはり出席する価値はなかったな、と思うものも多い。振り返ってみて、いったいあの研修で何を学んだのだろうか。そう感じてしまうのだ。
…というようなことを、以下の記事を読んで考えた。
この記事は「研修開発入門 「研修転移」の理論と実践」という本の宣伝の記事なのだろう。だが、なかなか示唆に富むものだった。そもそも研修とは何か、という問いに対しては「研修転移」を行うものと回答する。その研修転移とは何かというと。
研修転移とは、
1.「研修の中で学ばれた知識やスキル」が実際に「仕事の現場」で実践される
2.参加者の「行動」が変わり、現場や経営に「成果」を残すことができ、
3.かつ、その効果が持続すること。
…と述べる。これは非常によく分かる。
そして、これらを阻害するものとして、以下の3つの壁を紹介している。共感。
1.記憶の壁(研修内容を覚えていない)
2.実践の壁(活用のモチベーションがあるか、機会があるか)
3.継続の壁(実践を継続できるか)
この記事や本で扱う問題の、「研修はやりっぱなしになりがち」という指摘は、非常によく分かる。私も色々な研修に出たことがあるが、やりっぱなしになって、今は何も残っていないものも多い。
振り返ると、「研修内容を活用する場」が決まっている研修には意味があった。研修内容がつまらんな、と思うものでも、否が応でも習った内容を活用しないといけないからだ。最新の話題を扱っているので、ちょっと出てみよう、という研修はほとんど頭に残っていない。
つまりところ、2.の実践の壁は非常に厚く、高いものだと思う。中小企業診断士としてのセミナーとか研修を考える時、ついつい1.ばかりを考えてしまうが、2.が肝なのではなかろうか。
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この本では、良い研修は以下の点が重要という。
研修参加者の上司や同僚ー職場を巻き込んだ研修を、いかにデザインし、実践するのかの方が極めて重要である。
その通りである。これまでの研修は、インプットや演習を入れつつも、「あとは皆さま実社会で他の人を巻き込み、活用していってください」といった結論で終わるものも多かった。どのように巻き込み、活用する環境を作っていくかも含めた研修のデザインが重要なのであろう。
この点を踏まえ、この本では、研修のデザイン方法について述べている。
だが、世の中の多くの研修は、まだまだ実践の壁が分厚く残ったままのものだと思う。この壁を打破するためには、私自身を含め、出席者自身の意識の改革が必要である。ひとつには、活用の場が本当にあるかを確認し(できれば第3者にも判断してもらい)、出世を決めることであろう。そうしないと、出席しただけで満足するだけの、研修参加となってしまう。
中小企業診断士の試験対策をしていると、提案内容に「従業員のOJT」「外部研修の参加」と回答することもある。だが、「その効果を高めるための工夫も必要だよな」という意識は、今後も考えていきたい。